emi+ 小林:
前回に引き続き、テーマに沿ってお話をお伺いさせて頂けたらと思います。
よろしく御願い致します。
霜鳥さん:
宜しく御願い致します。
emi+ 小林:
若手を戦力化させるために、霜鳥先生がサポートされている中で色々な内容があると思うのですが、例えば、どの様な内容がありますでしょうか?
霜鳥さん:
弊社では、パッケージ化された教育研修ではなく、企業様毎の課題に対して、教育研修プランを内容・実施期間・ご予算などに応じて全てカスタマイズしております。
例えば、新入社員等のOJTトレーニングを実施されている企業様の事例があります。
emi+ 小林:
先輩が実務を通じて教育していく、OJTトレーニングですか?
霜鳥さん:
はい。OJTでトレーニングされている企業様は多いと思います。
ですが、OJTをする方向けにOJTのやり方を、教育する企業は少ないんですよね。
OJTのやり方一つで、人材の成長度合いは変わってくるので、そのOJTを行う人材のトレーニングを私共がサポートさせて頂くという事はよくあります。
emi+ 小林:
OJTのやり方のトレーニングですか!
確かに、直属の上司か、なんとなく面倒見の良さそうな社員が新人を教えるという様なケースが多い様な気がしますね。
霜鳥さん:
そうなんです。OJTの方法が自己流の場合、ただ自分が教わったやり方を伝える。という事しか出来なくなってしまいます。それが、人を選ばずに効果的な
方法であれば良いのですが、正しい若手教育とは必ずしも限らないんですよね。
そこに人が育たない事に繋がるリスクがあります。
特に、初めてOJT担当となる方は、正直、どうやって教えたら良いのかよく分からないというのが本音の方も多いのではないでしょうか?
emi+ 小林:
なるほど、確かにOJTをやる側の教え方が正しく均一になれば、人によって言う内容がバラバラになりませんよね。
霜鳥さん:
そうです。企業が人を育てる際に。
新人の育て方を教えられる社員を育成しておくことで、人材育成の質を高める事は、若手が戦力化するために重要な視点だと考えます。
emi+ 小林:具体的には、どうやってやるんですか??
霜鳥さん:
それが毎回盛り上がって、面白いんですよ!!
ひとつの例で。。
「ペットボトルを見た事が無い人に
水の飲み方をどうやって教える?」
というロールプレイから始めるんです。
「目の前にあるのは、“ペットボトル”といってその中にあるのが“水”で、これからその中の水を飲みたいと思います、その中の水を飲むために、まずは、左手で左横から中央付近を掴みながら・・・」という様に。。
emi+ 小林:
え!?どうゆう事ですか? なんか簡単そうで、、いや、なんか難しそうですね!
霜鳥さん:
自分が当たり前に出来ている事を、人に教える為に、業務を細かく分解して、相手が分かる言葉に変えて伝える。
その事の難しさを認識してもらうと共に、日々の業務を教える立場の中で、自分もできているのか、振り返って頂きます。
新人は出来ないのは当たり前。
教えたつもりでも、出来ないのは、相手が理解しないから悪いのではなく、多くの場合、教え方が悪いと思った方がいいと考えます。
emi+ 小林:
確かにそうやって一つ一つを教えれば確実に相手に伝わる教育ができそうですが、とても大変そうですね??
霜鳥さん:
人を育てるという事はそれだけ重要な事ですし、簡単な事でもありません。
忍耐や感情のコントロールが必要なんですよね。
emi+ 小林:
例えば、マニュアルが整備されていれば、マニュアルをまずは見せるという方法もあるかと思いますが。
霜鳥さん:
マニュアルを見なさい。と指示する事はとても簡単です。
ある程度伝える為には、マニュアルは効率的ですが頼りすぎると、文章は人によって捉え方も違いますので、
業務によっては、重大なミスや事故の発生に繋がってしまいます。
マニュアルをただ読ませておくという事は、教育担当としては、何もしていない事と同じです。
新人に「伝えたい事を間違いなく伝える能力」が大事ですね。
emi+ 小林:
マニュアルに頼り過ぎると確かに伝わり方が人によって違いそうですよね。
ちゃんと伝える方法のポイントってありますか?
霜鳥さん:
まず、自分がこうして欲しいと望む行動を相手にしてもらうためには、「どうして欲しいのか」を相手に伝わる言葉で、
細かく伝えないと相手は動けません。
教えるのが不得手な教育担当は。
「なんで出来ない?!なんで分からない?!」
と新人に当たってしまいますが、これはただの八つ当たりです(笑)
責任を持たされて、教育する立場であるにも関わらず、教えたつもりになって、伝わっていない相手の責任にしてしまっては、教育担当者も成長しませんし、
教わっている人も育たないです。
emi+ 小林:
なるほど、つまり教え方や伝え方を分かっておかないと、精一杯やっても、教えたつもりになって相手の責任にしてしまうという事ですね?
霜鳥さん:
そうです。
ですので、OJTの方法を教えられる社員を育てておくと、新たにOJTを担当する事になった社員に対して社内でトレーニングを行う事が出来ますので、
新人向けに行うOJTのレベルが上がります。
emi+ 小林:
なるほど、教える側の人間を企業としてしっかり育てて用意しておく事が、結果的に若手の戦力化に繋がるという事ですね。
霜鳥さん:
そういう事ですね。
直接、若手に研修を行う事もありますが、社内で教える側の人間をしっかり育てておく効果は大きいと思います。
emi+ 小林:
他に、戦力化させるための視点というかポイントはありますか?
霜鳥さん:
特に従業員数が30名以下の企業の社長が直接指示を出す事が多い場合であれば、
「経営者の想いや考え方も分解して、従業員に伝える」
という事も若手のみならず組織の戦力化には重要です。
emi+ 小林:
想いや考え方を分解して伝えるですか?
霜鳥さん:
はい。従業員10名程のある企業様のサポートをさせて頂いた事があります。その社長の悩みは、「売上を上げろ!といつも言っているのに、従業員のモチベーションが感じられず、売上が伸びない。」ということでした。
実は、弊社で使用している「組織のチーム力」を診断するアセスメントがありまして、0~100までの結果が出て、標準的なチームでは、50に近い結果が出るのですが、
その企業では10以下だったんです。
emi+ 小林:
そうゆう診断があるんですね、10以下とはどの様な数字なのでしょうか?
霜鳥さん:
つまり、チーム性はほぼ無し、いつでも辞めてやる!と、心の中では思っている社員の集まりという事になります。
愛社精神や組織に貢献するという気持ちが全員に無かったんですね。
その結果をご説明した際、社長は物凄くショックを受けられてました。
実際に離職者や指示・命令に対してやらない人の多かったようですが、業界的に普通なんじゃないかと社長の中では認識されていたようです。
emi+ 小林:
その現実を突きつけられたら社長のショックは相当大きいですよね。。
霜鳥さん:
非常にショックを受けていらっしゃいました。
私共としては、この状況を乗り越えていくお手伝いをさせて頂きたいと何度もお話をさせていただき、社長と役員の方々と一緒に、
研修プランのお打ち合わせをさせて頂きました。
そして、ご提案した計4回の研修の第1回目で。
「社長の今までの生まれてからの生い立ちと、普段考えている事を全社員に伝えて下さい」
と提案しました。
社長に抵抗感が見えましたが、役員の方から「話して頂けるなら、是非聞いてみたい」とおっしゃっていただけたことで、社長も話をして下さる事になりました。
emi+ 小林:
確かに、社長が何を普段考えているのか、また昔どんな人だったのかって、普段だとあまり聞く機会って無いですよね。
霜鳥さん:
そうなんですよ。
だからこそ、社長の言動に対して誤解が生じてしまうんですね。それが、結局、組織の戦力にも影響してしまうんです。
だから、幼少の頃からの習慣や環境でどのような考え方をするようになったのか分解して話をしていただこうと思いました。ここで細かくお伝えする
と特定されてしまう可能性があるので控えますが、この社長は全社員に対して心を開いて話してくださいました。
研修後の社員さんへのインタビューで。
「あの話のおかげで社長の言っている事が理解できた」
「どんな人なのか知れてよかった」
「どんな想いで普段指示しているのか分かった」
という声があがり、社員の社長に対する見方が180度変わったんですね。
第二回目以降、会社全体を発展させていくために各部署で何を貢献するのか、また周りの部署にはどんな要望があるのかをまとめ、闊達に議論し、
意見を出し合う事が出来ました。
通常業務の後、遅い時間に全員で集まって研修は行っていたのですが、第二回目以降、そうとう盛り上がりました。
emi+ 小林:
社長に対しての見方が変わる事でバラバラだった組織がそんなに変わるんですね!!
霜鳥さん:
社長や役員の方は、当たり前に会社の為に協力し合える雰囲気が出来たと、仰っていました。
また、社長曰く役員の方が、今まで以上に張り切って社員をまとめ上げてくれる様になってとても助かっているそうです。
今でも連絡は取っていますが、「また定期的に、自分の想いや考えを発信する様にしていきたい」とおっしゃっています。
emi+ 小林:
きっと、社長の発言をきっかけに、他部署や、他のメンバーの考え方も理解できて、協力しようという気持ちになったんですね。
なんとなく分かる気がします。
霜鳥さん:
既にやられている企業様もあると思われますが、社長が心を開いて、想いが社員にしっかりと伝わった時、組織や組織の目標に貢献したいというモチベーションが
向上するのではないかと思っています。
社員の “会社に対しての気持ち” や “お互いに貢献し合えるような関係(エンゲージメント) を育てていく。
人材を戦力化し、社員により活躍してもらうためには必要な事だと思います。
emi+ 小林:
前回と今回で、若手の定着や戦力化についてお話を色々とお伺いさせて頂きました。ありがとうございます。
最後に、あまり人材育成に取り組めていない企業に対してメッセージはありますか?
霜鳥さん:
人材育成の優先順位を上げて欲しいという事ですね。
人材育成費や広告費が削られやすいコストと言われがちですが、助成金の活用も出来ますし、売上は人が作るものですので、特に採用難の昨今ですから、更なる発展をしていくための、人財育成に取り組んで頂けたらと思います。
emi+ 小林:
ありがとう御座いました。
また是非お話をお伺いさせて下さい!
株式会社キャリアトラスティング
代表取締役 霜鳥 光先生
【ご紹介】
「組織力向上」「マネジメント」「営業力強化」「コミュニケーション」「女性の活躍」「管理職育成」「若手向け研修」など、組織にとっての最重要経営資源である人材の育成支援を事業とされ、累計2500件以上の研修を実施。企業や公的・教育機関など、様々な組織の課題に対して、オーダーメイドの教育プランをご提案され、課題解決のサポートをされてこられました。また、信州大学のキャリア形成論の非常勤講師としても2011年から7年間御活躍されていらっしゃいます。
株式会社キャリアトラスティングHP:http://careertrusting.jp/